大杉 清

2024 22 Feb

マニアックな縫い付けの話



皆様いかがお過ごしでしょうか。
本日のブログは高円寺店より大杉が担当でございます。


ヘビーアウターの仕事もそろそろ終盤、きっと次のバトンはライトアウターに渡される頃です。
この、バトンタッチをする頃と言うのはどうしてもお金を使いたくなってしまうのが服好きの悩みです。

服好きにはワクワクする良い時期なのですが、


「似たようなもの、持ってるでしょ」


という悪魔のような一声により、あんなにあった物欲がどこかへ行ってしまった経験もあるはず。


ただ、ちょっと待ってください。


それって、本当に似た洋服ですか?


今、皆様が持っている洋服と購入しようかなと思っている洋服が本当に似ているのか?

または、どう違うのか?

見極めるための術をご紹介しようと今回のブログに至ります。


そういった知識があれば逆に、「ああ、もう似たようなの持ってるじゃん」自分自身で納得が出来れば、悪魔のような一言に落ち込むこともないはず。

今回はちょっとマニアックな話になるかと思うので、ご興味ない方はそんな世界もあるのね、と読み飛ばしてください。

それでは、本日もよろしければお付き合いください。



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今日のお話は「縫い付け」の話。

レディースの洋服の始まりは「魅せる」ことを目的としていることが多いのですが、メンズの洋服は「道具」として始まっていることが多いです。

例えば、ジーンズは炭鉱で着用する作業着、スタジャンは運動中の防寒着、スウェットはトレーニングウェアとして生まれています。

なので、メンズの洋服は自身を「着飾る」ところとは無縁のところからスタートしているのです。


そういう洋服がおしゃれな洋服として扱われたのはきっと各時代、各カルチャーのスターの存在のおかげでしょうね。



お話が逸れてきましたが、何が言いたいかと言うと、「縫い付けの種類から洋服の出自が分かりますよ!」ってことです。笑


例えば、ジーンズを始めとするワークウェアですが、







2本針ミシンで縫われていることが多いです。

縫い付けの方法としては、2枚の生地をくるっと巻いて、S字のような形を作り、2本の針で縫い付けます。

それが





こんな感じ。

この縫い方を、「巻き縫い」と呼んでいます。

縫い付け部分の強度を上げましょう的な縫い付けなので、負荷がかかりやすい所は巻き縫いを施していることが多いです。

生地の重なったところは”4枚”ほどの厚みがあります。

そんな箇所を太い糸と2本の針で縫い付けますので、かなり頑丈に。

皆様の身近なところで行くと





ジージャン。

持ってらっしゃる方は肩から背中にかけて、腕周りなどの縫い付けを見てみてください。

15.7ozの生地が4枚重ねになっていて、しっかり分厚いはず。


他にも、面白いのがシャンブレーシャツ。

このように、







3本の針で縫う場合もあります。

襟周りは2本針に対して、肩や袖の縫い付けは3本針で縫われています。


多分これは「縫い糸の数が増えたら強度が増すでしょ!」みたいな発想から生まれたものかと思います。笑

シンプルで素敵です。笑



あと、面白いのがワークウェアは見栄えは気にしていないケースが多いので、





デニム生地に黄色や、白など、地味な色合いの生地に目立つ色を使われていることが多々あります。

アメリカは戦時中は物資が少なく、余った糸で縫い付けをしていたこともあったそうなので、青いシャンブレーシャツの縫い糸が緑だったこともあったとか。そうでもないとか。



対して、







シャツ。(私物です。すみません。)

特徴としては”主張しない”縫い付け。

なので、









使用する糸は細く、縫い付けの感覚は細かく、目立たないようになっています。

また、同色で縫い付けることで、より主張を抑えています。

ポケットも「本当に縫い付けられているのか?」というほど縫い付けの印象は薄いです。

ポケットの淵の部分も際を狙って縫い付けているのもワークウェアでは見られないディティール。



ちなみに、皆様の記憶に新しい






このJKT。

実は面白い縫い付けをしていまして、







細い糸を用いて、縫い付けの感覚を細くしています。

また、肩回りに関しては






3本針で縫い付けるという面白い縫い方をしています。笑

本来、カバーオールはワークウェアなので、ジージャンのような太い糸での2本針での縫い付けになることが多いですが、

このJKTはワークウェアにドレスシャツのような縫い付けを行っているというのがミソ。

そのため、ワークウェアっぽさはありつつも、落ち着いた印象に。



他にも、











縫い付けの印象で大分雰囲気が変わります。

その点で言えば、BLKの生地にBLKの糸で縫い付けを行うと落ち着いた印象になることも見比べると分かっていただけるはず。

逆に言うと、インディゴ色に黄色やオレンジの縫い付けとなれば、一気にジーンズ感も出ます。

縫い付けが与える印象と言うのは意外と大きいのです!




まだまだ縫い付けの種類はあるのですが、桃太郎ジーンズで主に見かける縫い付けは大体この辺かなと。


ですので、皆様も一度クローゼットの中身を見てみて、縫い付けを見てみてください。

既に似たようなものを持っているかどうか、仕様から判断できるようになるはずです。
(悪魔のような一声を説得できるかどうかは別のお話かもしれませんが…!)


もう少ししたら春夏物も入ってきますので、その際は気にして見てみてくださいね。

そういったお洋服の仕様も店頭でディープにお話できれば幸いです!


 

それでは、また。


高円寺店 大杉

Mail:kouenji@japanblue.co.jp